作品調査9
エイレットの未修復の作品を観察しています。
これまで拝見してきた作品はどれも修復済みのものだったり、過去に展示用の台紙にマウントされた状態であったため、作品の裏側を見ることができませんでした。
これまで展示されたことのない未修復の作品を見せていただいた事で、やっと裏側を確認することができました。
Trichosanthes (作品裏)
Georg D. Ehret
517x 354mm 1751年
©︎ The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
まず、羊皮紙には肉側と毛側があり、見た目や性質、描き心地が異なります。ただし深く削られたり研磨されると似通った状態になり、判別しずらくなります。
今回裏側を確認できたエイレットの作品16点のうち、14点が肉側に描画されていることがわかりました。残りの2点は私には判断できませんでしたが、おそらく肉側に描かれているのではないかと思います。
羊皮紙の専門家の方に確認をお願いしたところ、現代では毛側を好んで描画する作家が多いものの、羊皮紙の製造技術がまだ十分でなかった時代には肉側への描画が一般的であったと伺いました。
自分が毛側に描画しているせいで、過去の作家も毛側に描画しているのだろうという先入観がありましたが、どうやらこれまで観察してきたエイレット以外の作品に対しても、肉側に描画されていると考えると納得がいきます。
自分の用いているヴェラムと、18世紀に植物画に用いられていたヴェラムでは品質も使用される面も異なり、現代の作品制作への参考とするには難しい印象です。
面白いことがわかったなという半面で、ちょっと調査の目的が見えなくなってきたぞという一抹の不安があります。
0コメント