大英博物館2
マリア・シビラ・メリアンの作品を見るため、また大英博物館を訪れました。
作品もちょうど展示替えされており、エキゾチックなパパイヤを見る事ができました。
緑の色が爽やかで美しいです。ドイツ生まれ(1647-1717年)の彼女は、当時は異端とされた昆虫の変態など科学的観察を行い、昆虫学に多大な貢献をした人物です。1699年には南アメリカを訪れて現地の動植物を描いています。
このような完全度の高いヴェラム作品が何十点と綴じられているなんて、次のページをめくってみたくて仕方ありません。またもやガラスがもどかしいです。
マリア・シビラ・メリアンの作品のすぐ近くに、ミュロン(紀元前480年頃~445年)の「円盤投げ」の彫像があります。大英博物館の大理石像はハドリアヌスの別荘から発掘されたもので、均整のとれたとても美しい形です。オリジナルは青銅製だったそうですが現在は失われており、微妙に形の異なる複製がたくさん作られているそうです。
学生時代に「円盤投げ」の石膏像をデッサンしたことを懐かしく思い出しました。それなりの忍耐力がいりましたが、最近デッサンの重要性を説かれる機会が多く、過去の地道な訓練も無駄ではなかったなと感じています。
同じく石膏像でよく目にする「セレネの馬」(紀元前438年〜433年制作) の彫像も博物館の別室にあります。
ギリシャのパルテノン神殿の装飾の一部で、月の女神セレネの乗る馬車を引いている一番先頭の馬です。本物は温かみのある色合いや大理石の模様など、当然ながら石膏像とは比べ物にならない趣があります。
石膏デッサンは形を正確に把握する訓練のようなもので、少しでも手を休めると元の感覚が戻るまでに休んだ分の2倍の時間がかかると指導されたものです。
もし今同じものを描く事になったら、果たしてどれだけ正確に描けるのか…全く自信がありません。
とはいえ、チェルシー植物画学校の描画講座で取り組んだ陰影描写は、石膏デッサンとは趣旨が違うとのことでもう一度やり直しています。目に見えた通りに描写するのでは陰影が複雑になりすぎてしまうため、単純化して頭での理解を優先させるようです。
石膏と違って植物は短時間で形を変えるため、時間をかけてデッサンするわけにはいきません。私は実物に頼って描写しているせいで、植物の変化や太陽の位置に翻弄されていますが、このように単純化された陰影のパターンを覚えてしまえば、状況の変化にもある程度は対処できるなと思いました。
一般的な絵画と植物画の趣旨が少し異なるように、それぞれに適した描画の理論もほんの少し異なる事に気づかされました。
目で見て描くことに慣れていると、頭で描くのは意外に難しいです。
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