作品調査7
今回は念願の織糸マウントを拝見しました。
80本近い糸が作品の周囲に接着され、台紙の裏にまわされています。見るからに異様な状態のマウント方法です。
描画の質よりも、何本もの糸で手間暇をかけて作品を磔状態にした修復者をまず労いたい気持ちになります。これだけ大切に扱ってもらえる作品は、決して多くはないのではないでしょうか。
この方法がどれだけヴェラムの歪みを抑える効果を持つか確認するのが当初からの目的でした。
Xiphion Persicum praecox (マウント部分)
Georg D. Ehret
335x445mm 1757年
©︎ The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
織糸マウントを約10年前に施した、エイレットの作品3点を調査しました。以前ご紹介した余白が継がれた作品と同じく、とても丁寧な四重の蝶番式のマウントが施されています。同じコレクションのエイレットの未修復作品と比較した所見では、この作品も修復前に多少の歪みや緩やかな凹凸が存在しただろうと想像されます。修復時にこの歪みをどの程度まで平らに伸ばしたのかはわからないのですが、織糸マウントを施した作品も完全な平滑面というわけではありませんでした。
このような手の込んだ処置を行ってもなお、ヴェラムの伸縮をコントロールできないのかもしれません…。
織糸マウントを自作に試したいと考えていたのですが、少し不安を感じています。
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