ナショナル・ギャラリー

休日にナショナル・ギャラリーに行ってきました。日本の美術館と違う点がたくさんあり本当に驚かされます。


まず豪華さ…、作品よりも思わず回廊や天井の装飾に目が行ってしまいました。自然光を取り入れた展示室にも驚きますが、ドーム型やアーチ型のガラス天井のデザインがなんとも優雅です。展示室の壁は赤紫、深緑、灰色などシックな深い色合いで、模様入りの壁紙も使われており、各部屋によってインテリアが異なります。
日本の美術館はシンプルなデザインや窓のない白い壁が一般的かと思うので、展示環境に大きな違いを感じました。


作品は撮影可能のうえ、商業目的でなければ自由に使用してよいとのことでした。宣伝になるのでむしろ使ってくださいと言われ、驚いています。
建物の重厚感のわりにはずいぶん軽い感じです。

何十室とある展示室のいくつかは、子供向けのワークショップや、ぬいぐるみを使ったお話会などで貸切になっていました。クッションを持ち込んで、たくさんの子供達が地べたに寝転びながら好きな作品を模写していました。小さな頃から楽しく名画に触れられる環境が与えられていることに感動します。この点にも日本との違いを感じました。


中には展示室で赤ちゃんにミルクを飲ませている人もおり、さすがにそれは…と思いましたが、ずいぶんと自由に使われている場所なんだなと感じました。
歴史ある名画を、こんな立派な環境で誰もが観賞できるなんて素晴らしいです。入場無料なのに混み合うこともなく、作品を間近でじっくり鑑賞できました。


Leonardo da Vinci (1452-1519)
The Virgin and Child with Saint Anne and Saint John the Baptist 
1499-1500

等身大の人物が描かれたダビンチの大型素描も、鑑賞者がほとんどいませんでした。たくさんの紙が継がれた上に、木炭と炭カルで描かれています。やっぱり骨組みとなるデッサンは大切ですね。



Jan van Eych (1390-1441)
Saint Barbara
1437

よく美術の教科書に載っている、ヤン・ファン・エイクの作品です。写真のなかったこの時代にここまで写実的かつ細密に描けることが驚異です。下地を施した板にメタルポイントで下描きのような陰影がつけられた未完成作品もあり、制作過程を知ることができる貴重な資料でした。
ヤン・ファン・エイクの作品室は中学生くらいのワークショップで賑わっており、皆真剣にメモをとりながら鑑賞していました。


Jan van Huysum (1682-1749) 
Flowers in a Terracotta Vase 作品部分
1736-1737

上の画像はキャンバスに油彩で描かれた巨大な作品の部分図です。様々な花が花瓶に活けられた、当時のオランダで流行した「花束」の作品で、植物の種類が明確に描き分けられています。
作者はエイレットのほんの少し前の時代のオランダ人画家です。
個人的には、異なる植物を組み合わせる際の前後関係だとか、植物が枯れてしまった後の画面上での辻褄合わせなどは大変難しいことだと感じています。これだけ大きな作品ならば作品構成の苦労は尚更でしょう。立体感や陰影が的確に表現されていて圧巻です。

水彩で紙に描かれた植物画作品は、立体描写への意識が乏しいことがよく指摘されてきました。この件に関してはいつでも油彩画に学ぶ点がたくさんあります。

 

チェルシー植物画学校での講習のひとつに美術館での自主学習が含まれているため、今日はこの課題を兼ねて鑑賞しました。
日が少しずつ長くなってきたので、帰宅後にデッサンの宿題の続きをしています。美術館での学習が糧となるよう、基礎からがんばりたいと思います。


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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