描画講座1

チェルシー植物画学校は、2年間のディプロマ講座を主軸に運営されています。通年で30回、週に1日のペースで、午前と午後の約6時間をかけて学びます。

形式上は、私はこのディプロマを受講していることになっていますが、以前お伝えしたように学校側の事情により特設講座を受けています。1日の受講時間は3時間、1週間のうち2日、多い時は5日間通います。2年間分の内容を半年以内に修了するという、かなりハイスピードな計画です。
基本的には通常クラスと同じ課題に沿って、指導者側の方法論をご教示いただいています。例えば、各課題のねらいや、理論と課題の関係づけ方、折々での受講生への対応などです。



今日はどのように鉛筆デッサンを進めているのかを学びました。通常のディプロマクラスでは、なんと…石膏デッサンが行われるそうです。これまで自分の担当する講座の中でも石膏デッサンの必要性を感じることはありましたが、まさか本当に実践することまでは思い至りませんでした。日本でよく見られる人物型の石膏像ではなく、下の画像のような装飾風の石膏を用いているそうです。場合によっては松ぼっくり形の石膏像を特注で作ってもらうと聞きました。もちろん、まず平面的な明暗階調、単純な立体での練習を経てから石膏デッサンを始めます。

さらに、鉛筆デッサンと並行して照明や陰影について学ぶ内容になっており、基礎部分が徹底していると感じました。日本の一般的な植物画の学習法と違いが見られて興味深かったです。




他にもこれまで知らなかった方法論を伺い、とても新鮮に感じています。かなり合理的かつ計画的にカリキュラムが組まれています。
さっそく諦めるようで申し訳ないのですが、これほど準備された植物画講座を日本で再現するのは不可能だなと感じてしまいました。
言い訳のひとつとして、受講費用も信じられないような価格なのです…。受講生の中には、毎週海外から飛行機で通ってくる強者もいるそうです。チェルシー薬草園のブランド力に惹きつけられる富裕層が一定数いるのだと伺いましたが、世界的な注目度が高いのはきっとそれだけではないでしょう。もちろん価格の分、真剣さも高まるようです。20人弱の受講生のうち、中国、韓国、日本などのアジア圏の受講生も毎年数名いると聞きます。


私にとっては知名度よりも、指導や制作方針の合う講師に出会えたことが何よりの幸運でした。
狭い植物画分野でも作家によって考え方が大きく異なるなか、国や世代を越えて、納得できる指導を得られることを本当に嬉しく思います。



帰りがけに、街中で似たようなオブジェを見かけました。いったい何の形なのか気になります。


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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