羊皮紙工房の訪問

本文と特に関係ないのですが、朝方の池にハクチョウがいました。こちらではリスもよく見かけます。
朝9時でやっと日が昇ってきたなという状況で、日本と比較するとさすがに日が短いです。

霰のようなものも降ってきて、だいぶ寒さが厳しく感じられます。


さて、今回の研修内容のひとつに、羊皮紙工房での製造過程の確認があります。

今日のイギリスでは羊皮紙産業は衰退の方向にあります。動物愛護への意識が高まるなか、かつては多くあった羊皮紙工房も次々と閉鎖を余儀なくされ、唯一残ったウィリアム・カウリー社もごく控えめに操業しています。
羊皮紙は王室の証明書や国会の公文書などにも用いられ、カウリー社がこれらを支えてきましたが、現在は国会での羊皮紙の使用を取りやめるか否かが審議されている途中だそうです。近年ボタニカルアートで注目されてはいるものの、羊皮紙の将来は決して明るいとは言い難いのが現状です。

私自身が動物が好きで、かつて日本画を制作していた頃の描画対象は、ウシ、ヤギ、レイヨウやシカでした。そのため、動物の皮を利用することに対して常に葛藤があります。死産の子牛を美しい作品にして弔っているのだと慰めてくださる方もいらっしゃいますが、このまま羊皮紙に描き続けて良いのか、さらには他作家に羊皮紙を勧められるのかを判断するには、原料の入手状況を自ら確認する責任があると感じました。
もちろん、動物愛護のためだけに工房を訪れるわけではありません。研究者の立場から、長い歴史を持つ優れた支持体が、どのように作られているのか確認することが本来の目的です。羊皮紙の利用で獲得できる表現を考えると、今の段階ではこれに代わる支持体は思いつきません。



ウィリアム・カウリーの工房はニューポートパグネル (Newport Pagnell) という、ロンドン中心部から80kmほど北の町にあります。創業150年の歴史を誇り、高い品質を保つ信頼の厚い工房です。

以前から、いつか訪問できればな…とは思っていたのですが、有り難いことに来週お邪魔させていただくことになりました。
大変貴重な機会に、製造過程や原料の入手状況をしっかり確認してきたいと思います。



Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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