大英図書館 特別展

大英図書館で、羊皮紙が綴られた本や羊皮紙の文書などがメインに展示された特別展が開催されていました。

残念ながら撮影不可でしたので、画像でのご紹介はできません。
昨年の特別展はハリーポッターだったそうです。ちょうど羊皮紙関連の展示期間に滞在できて幸運でした!


特別展
ANGLO-SAXON KINGDOMS
ART, WORD, WAR
2018年10月19日〜2019年2月19日


パンフレットには、「600年間の180点、一世一度の展覧会」という見出しが付いています。
この180点のうち、8割ほどが羊皮紙に関する展示であった印象です。大変質の高い展示内容で、平日でも入場制限があるほどの人気でした。動画での説明が各所に用意され、会期中には内容の異なるギャラリートークが何度か開催されます。

残念ながら、私には羊皮紙に書かれた内容を理解する能力がありませんでした。英語圏の入場者は、皆さん夢中になって内容を読んでいるようで羨ましかったです。中にはアルファベットでない見たことのない文字もありました。後日図録を訳したいと思います。

仕方がないので、鑑賞はもっぱら劣化や保存修復の状況について、外見から想像できることのみです。ほとんどの本が厚さ5cm以上あり、中には厚さが30cmもありそうな巨大な本もありました。天然由来の顔料やインク、金箔での雅な装飾に溢れていました。

中でも特に気になったのは、Kewの作品修復と同様のアタッチメントがつけられたものに、和紙の「喰い裂き」という日本画の技法が用いられていたことです。展示物への負担を極力減らすよう、2-3mmの重なりで直に接着されていました。
参考までに、下の画像は薄美濃紙を「喰い裂き」した状態で、右はカッターで裁断した状態です。毛羽立った和紙の繊維部分に糊をつけるので、接着面積を減らすことができます。
羊皮紙の修復に和紙が用いられているとは聞いていましたが、思いがけず日本画の細やかな技法を目の当たりにし、至近距離から舐めまわすように鑑賞しました。不気味な日本人に、周囲の来館者は気持ち悪さを感じていたかもしれません。


600年間の時の流れのせいか、修復の方法は一貫しておらず、時代によって方針や技術力に差が見られました。材料には、新たな別の羊皮紙、紙、古色の付けられた和紙、目の荒い織物などが選択されています。
これらは湿度管理されたガラスケース内に展示されています。温度約19.4度、湿度54パーセントと表示されていました。
しかしながら、修復が完了したものも含めて、ほとんどの羊皮紙がベラベラに波打っています。植物画作品と比較すると、画面の平滑さに対する意識の差が印象的でした。美術品として鑑賞する目的にないためか、綴られているため湿度を与えて伸ばせないためか…、あくまで古典としての歴史的価値を損なわないよう、歪みや波打ちの修正は必要最低限に抑えられている印象です。


今日は膨大な資料を鑑賞し羊皮紙の奥深さを見せつけられましたが、まだこれは羊皮紙のひとつの側面に過ぎないようです。貴重な展示を鑑賞できて興奮冷めやらぬものの、ロンドンに到着してから4日目ですでに情報過多で頭がパンクしそう…。じつはまだ時差ぼけで深夜に目が覚めます。
植物画に用いるヴェラムが研究対象であることを忘れないようにしないと、圧倒的な情報の波に飲まれて溺れそうです。


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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