大英博物館

今日は大英博物館に収蔵されているヴェラム作品を鑑賞しました。
展示物は撮影・掲載可能とのことなので、画像と共にご紹介します。

まずはお決まりの内部のガラス天井から。
たくさんある入口のひとつ、画像右に見える神殿のような入口から標本室のような展示室に入ります。


展示室に入ってすぐの場所に、マリア・シビラ・メリアン(Malia Sibylla Merian) の作品を見つけました。1700年代にヴェラムに描かれたB4サイズくらいの作品です。ヴェラムは紙に貼り付けられ、大型本として綴られています。ガラス越しの鑑賞がもどかしく、何度かガラスに頭をぶつけました。


本として収蔵されてきたためかヴェラムの歪みや波打ちが少なく、顔料も発色が良くて艶やかな光沢を放っていました。特にチョウ部分の筆致が黒く輝いており、作者が特別な思い入れを込めて彩色したのだろうと想像できます。画面中央の果実付近にヴェラムのシワが見られましたが、概ねとても良い状態でした。

果実の成長過程と共に、虫の成長過程も明確に描写されています。説明的な断面図や分解図を加えずに、一見ありのままの様子を描いたように見せていますが、作為的に計画されたじつに情報量の多い作品です。

絵画的に見ても黒と黄色の対比や位置関係がとても美しい作品です。先日拝見したルドゥテの作品と同じく、特に緑部分に展色剤の使用過多があるように感じられました。当時の顔料に見られる特徴なのかもしれません。


3ヶ月毎に別のページに展示替えされるそうなので、後日改めて見に来たいと思います。


そして、なんと同じ展示室内にバンクシアの原板を見つけました。バンクス(Joseph Banks)がシドニー・パーキンソン(Sydney Parkinson)に描かせた作品をエングレービングで銅版に起こしたものです。

目立たない足元に展示されているので、あやうく見過ごすところでした。


銅板と聞いていたのでもっと赤みがあり、ところどころインクの使用感や緑青の錆びつきなどの経年変化を感じさせるものと想像していましたが、まるで今製作したばかりのような艶やかさです。歴史的価値の高い逸品のため、かなり大切に保管されている事が伺えます。今インクを載せても、きっと当時と同じ作品を再現できるのではないでしょうか。


下の画像は印刷した作品になります。日本でも過去に何度か展示されているようで、私も数年前に渋谷と汐留で拝見しました。
西洋の植物画の歴史を振り返る時に、必ずと言っていいほど目にする作品です。

バンクシアの原画を描いたシドニー・パーキンソンが航海中に亡くなってからずっと後に銅版が製作されたため、植物の描写が形式的になり違和感を指摘する声もあります。それでも画面いっぱいに配された構図と、エングレービングの独特な雰囲気が圧巻の存在感を放つ作品です。
バンクシア・セラータ『バンクス花譜集』
The Trustees of the Natural History Museum, London 


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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