RHS展 作品紹介
無事にRHS展が終了し、作品の搬出を行いました。2日間とも非常に暑く、38度という過酷な環境での展覧会でした。これまでずっと涼しかったこともあり、突然の暑さにびっくりです。
日本からもお祝いのメッセージをたくさん頂戴し、改めて多くの方々に見守っていただいていることにしみじみ感謝しています。
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下の作品はベストペインティング賞をいただいたPandanus tectorius EnKehlenと、6作品の展示の様子です。
審査員の方にはタコノキ以外の植物も描いてみたらとアドバイスをいただきました。今後の展開も考えさせられます。
出品者の皆さんに画像の使用許可をいただきましたので、いくつかの作品をご紹介したいと思います。
まず、日本人作家の群馬直美さんが「下仁田ネギの一生」というテーマでベストエキシビット賞を受賞されています。初出品とのことですが、非常に描画技術の高い作風が印象的でした。テンペラ技法で描かれています。
群馬県で250年間もネギを栽培している伝統的な品種にこだわって描かれているそうです。
ネギのダンスを踊られるとの事で、ご本人もネギに合わせたコスチュームを纏われていました。
日本人の技術力は凄いなと、もはや植物画はお家芸と化しています。
審査員特別賞を受賞した、Betsy Rogers-Knoxさんの湿地帯の植物です。アメリカ合衆国から出品されており、以前ニューヨークで一緒に展示をさせていただいた作家でした。
ゴールドメダルではなかったものの、植物の生育環境を描いたテーマが評価されての受賞となったそうです。昨年から新たに設けられた賞です。
ご本人は、周りと異なる作風がどのように受け取られるか心配だったとの事でした。このRHS展では、オーソドックスな枠組みに従った植物画も評価されていますが、それ以上に新しさや独自性が求められていると感じています。
Shirley Slocock さんの、イギリスの海藻が組み合わされて描かれた作品も非常に美しいと感じました。植物画として藻類や菌類を描く作家は少ないため、新しい美しさを提示されたような発見があります。ゴールドメダルを獲得しています。
数種類の海藻が優雅に組み合わされています。構図も色合わせも、正方形の画面によくマッチしていて、私には特に魅力的に感じられました。
透き通るような質感や水に漂う立体感を表すために、常に海水に浸けた状態で描き、短時間ですぐに冷蔵庫に戻すという海藻ならではの細かな配慮があると伺いました。
ロシアから、作家5名がグループとして参加しゴールドメダルを獲得していました。教室や共通の団体からの出品だろうと想像していたところ、なんとインスタグラムで知り合った作家同士で、一度も顔を合わせることなく出品計画を全てオンライン上で行ったそうです。2ヶ月ほどの短期間で計画されたとのことで、情報化社会の新世代のスタイルを見せられた思いです。
数年かけて植物学的な調査を行っている作家が多いなか、短期間の準備で高い評価を受けたことに肩身の狭い思いをされていると伺いました。
実際にはかなり細かな配慮が必要だったと思うので、能力の高い作家にしかできないことだと思います。いろんなスタイルがあるんだなと新たな発見があり面白く感じました。
ジャガイモの断面と新芽を組み合わせた作品もありました。綿毛になる植物をテーマにしていたり、南アフリカの絶滅危惧種を描かれていたり、キノコを描かれていたりと、様々なテーマの切り口があって勉強になりました。
今年はヴェラムに描かれた作品は他には見られませんでした。植物学的な希少性や学習度合いよりも、どちらかというと表面的な描画技術が評価される傾向にあったように感じました。
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