作品調査28

引き続き大英図書館で図書を閲覧しています。

15世紀北イタリアの本には彩色された植物の原画が綴られていました。古代ラテン語とギリシア語で説明文が書かれています。根や葉の形が明確にわかるよう、おし葉を広げたように平面的に描かれていました。丁寧な観察と描写がされていますが、実際に生息している様子とは少なからず乖離があります。

続いて16世紀に書かれたスペインの薬草の本を閲覧しました。この年代では優れた作品もありますが、審美的かつ正確な植物画作品を見つけるのはなかなか難しいです。この当時に描かれた植物の図は主に医学書や薬学書に見られます。

資料によってはオンラインカタログから閲覧できるため、帰国後の講座でいくつかご紹介できそうです。

17〜18世紀は、これまでの研修で中心的に調査をおこなってきた期間で、貴族文化に支えられて植物画の質が飛躍的に高まった時期にあたります。


19世紀には植物画の描画方法を説明した指南書がいくつか見られます。どのように鉛筆を削るかから始まり、裏返る葉を正しく描く方法など、現代と変わらないような技法が説明されています。巻末にはウィンザーニュートンの商品広告まで印刷されているものもあり、現代の技法書と近い印象を受けました。このように内容が一般向けであることから、王侯貴族の権力の象徴であった植物画が、徐々に庶民へ広がっていった様子を垣間見ることができます。



大英図書館は学習スペースが充実していて、誰にでも開かれておりとても居心地が良いです。閲覧室の外の屋内中心部は比較的自由で、好きなように飲食をする人や子供連れの親子も見られます。


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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