大英図書館−保存修復部門−
大英図書館の保存修復部門を見学させていただきました。
大英図書館の書物は本だけでなく、巻物や地図、写真など様々です。素材も紙やヴェラムはもちろん、植物製や金属製などバラエティに富んでいます。植物に関する収蔵品が中心であるキュー図書館とはだいぶ様相が異なります。
これらの多様な収蔵品に対し、まず劣化と需要の度合いを吟味して修復を施すかどうかを決定し、その後科学分析などを経て修復方針が決められるそうです。キュレーターを中心に、分野の異なるスタッフが協力して保全にあたります。
例えば、今回見せていただいた広く近代的な修復室には約30人の実技系の修復者が働いており、それぞれに大きなデスクが割り当てられて作業を進めていました。別棟には約50人の科学系の修復者が分析を行い、その他に収蔵品のデジタル化のための撮影やスキャンを行うスタッフ約30人、多数の言語に対応する100人近いキュレーター、マウントや額装、害虫の監視などの様々な部門が保全活動を分担しています。
分野の異なるスタッフ同士が協力していくつかのチームが編成され、同時に同じ分野のスタッフ間でも情報や技術が円滑に共有されているようです。
主に実技系の修復者数名からお話しを伺い、質問を加えて約1時間ほど見学させていただきました。
日本製のティッシュを修復に使っているとの事でしたが、いわゆる市販のティッシュとは違い、大変薄い品質の良い和紙に見えました。薄くて強いということで、和紙が大活躍しています。
このティッシュの片面に膠を塗布し乾燥させておくと、切手のように湿らせることで粘着性を帯び、破れた箇所の修復に使うことができます。手作り和紙シールといった感じの便利なアイテムだなと感嘆されられました。
もちろんひと筋縄に行かない収蔵品もあり、作品ごとに配慮された方針が採用されています。
見学に訪れたついでに、大英図書館の利用登録を行いました。こちらの図書館もまた、V&A美術館や自然史博物館とは利用方法が異なります。
利用者数が格段に多いためか、登録がマニュアル化されています。2種類の身分証明書を提出し、細かな個人情報を入力すると、流れるような作業で1年間有効の顔写真つきIDが発行されます。
なんと閲覧に事前予約がいらないこと、資料を用意してもらうのに1時間ほど待つ必要があるとのことで、少し驚いています。
どちらにせよ、今後閲覧できる機会を楽しみにしています。
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