作品調査16
引き続き自然史博物館でサイモン・テイラーの作品を閲覧しています。
完成度の高い作品が多いものの、苦手な植物の傾向も見えてきました。作品の特徴についていくつか挙げてみたいと思います。
1. まず大きな特徴と考えられるのは、白色顔料をためらわずに使用している事です。ヴェラム作品に関しては花や葉の裏側を中心に白が効果的に用いられています。白を用いる部分と用いない部分で、わずかな距離感や陰影を表しています。
2. 画面に残る鉛筆の跡から、(少なくとも数点は)ヴェラムに直接デッサンをした後に彩色されていると考えられます。繰り返し鉛筆で描き直した跡や消え残りが比較的多く見られます。
3. 本来は見えないはずの奥の茎や葉が透けて見えることから、先に奥の部位を彩色してから手前を彩色していることがわかります。隠れた部位の整合性に配慮しているためと想像できます。
4. 展色剤が多めに使用されている印象があり、特にヴェラムに彩色された絵具はそのせいで光沢があります。艶やかさを表すために意図的に利用されたと見られる部位もありましたが、おそらく多くは意図しないものだと感じられます。
5. 下の花弁にあるようなハッチングをしばしば見かけます。これまで観察した限りでは、ヴェラムに描かれた同時代の他作品にはほとんどハッチングが見られないため、彼の描画の特徴と言えるのではないかと考えています。
現代においてもこの技法を植物画に用いる作家は少数派かと思うのですが、私もハッチングを用いる癖があるため興味深く感じています。
Magnoria acuminata (部分)
Simon Taylor
50×35cm 1760年頃
©︎ The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
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