作品調査14

自然史博物館の収蔵作品を閲覧させていただきました。

事前に訪問日を予約し、身分証明証と簡単な申請書類を提出すると、5年間有効のメンバーカードを受け取ることができます。リーディングルームは、火、水、木曜の10時から16時まで開館しています。
敷居の高そうな施設だなと身構えていましたが、一連のやりとりも大変好意的で、たくさんの作品を準備してくださっていました。
一方で、セキュリティや資料の取り扱い規約は厳重です。


キュー図書館で閲覧したビュート卿のシリーズと同じ、’Plants by Taylor’と刻印された I、II、IIIの3巻を用意してくださっています。一人で持ち上げるには不安を感じるほど大きく重たい本です。キュー図書館の巻に比べると、革張りの外見は傷や擦れなどで痛んで見えます。

I巻は56点のヴェラム作品、II巻は50点のヴェラム作品、III巻は65点の紙作品で構成されています。3巻とも全てのページが切り取られており、バラバラになった作品が表紙と裏表紙に挟まれて保管されている状態です。挟まれている作品が本当に当時その巻に綴られていたものなのかはわかりません。本体に残る切り取られたページ数と挟んである作品の枚数が合わず、また台紙の厚さや質も異なるため、他の巻の作品が混入している可能性があります。
切り離された作品は、共通の字体で記された学名や特徴的な緑の枠線から、このシリーズの一連の作と考えられます。
各作品の状態は、ヴェラム特有の大きなうねりを除いておおよそ良好です。


サイモン・テイラーの作品を見ていると、どんな植物に対しても安定した技術力が見てとれ、的確な描写に陶酔させられます。
これまでのところ、彼自身が小さな花や細い茎、細かい葉を持つ野草を好んでいる印象を受けました。たまにパッションフルーツやアサガオのような華やかな種も見られるのですが、彼のヴェラム作品では彩度や華やかさが抑えられ、控えめな雰囲気をまとっています。

エキゾチックで華やかな花の絵が好まれた時代に、目立たない野草を活き活きと正確に描き続けた彼の姿がおぼろげに浮かび上がってきました。ぼんやりと見えてきた輪郭を、もう少しはっきりさせてみたいです。同じ条件で描かれた作品を多く閲覧することで、描画技術などに関する推測の精度が高まるよう期待しています。

Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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