作品調査12
引き続きサイモン・テイラーの別作品を調査しています。
今回閲覧した22点の作品は一点づつがバラバラに独立しています。どの作品にも、前回閲覧した本に綴られた47点との共通点が見られました。
第一に、作品サイズとマウント方法が同じであること。どちらのヴェラム作品も紙の台紙にぴったりと張り付けられています。
第二には、本に施されていた三方金という金の彩色が、独立した各作品の3辺にも見られること。
作品を綴っていた左辺には見られません。
下の画像は金が塗布されている本を横から見た様子です。
Plants by Taylor
©︎ The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
第三に、作品の周囲を装飾する緑色の四重線が施されていること。
第四に、学名表記の形式がほぼ同じであること。属名は全て大文字の飾り文字で書かれ、種小名は筆記体で書かれています。作者のサインはなく、二種類の番号が振られています。
第五に、もちろん画風にも共通点があります。
したがって今回閲覧したバラバラの作品も、ビュート卿によって編纂された15巻の本から切り取られた作品と考えられています。
上の画像が今回閲覧した作品、下は前回閲覧した本に綴られている作品です。
独立した作品の方が、ヴェラムの歪みが顕著に現れています。本から切り離されたために作者がわからなるのを防ぐためか、いくつかの作品はおそらく第三者によってサイモン・テイラーの名前が鉛筆で追記されています。学名の間違いが修正されたもの、作品入手日や購入履歴が記入されたものもあります。
これに対して、本に綴られたままの作品には鉛筆での追記や学名の修正跡はほとんどありません。右上のコーナーにのみ、連続したページ番号がふられています。
本に綴られた作品と比較すると、独立した作品は全体的に汚れたり変色しているものが多い印象です。作品サイズは共通しているものの、台紙の紙部分はカットされていて大きさが少しずつ異なります。
自然史博物館にもビュート卿の編纂による同様の作品群が収蔵されているそうなので、閲覧を申請してみたいと思います。作品の描画水準はもちろんのこと、どのような状態で保管されているのか、劣化度合いは異なるのかなど、いろいろ気になる事があります。
サイモン・テイラーの作品はどれも高い描画技術で描かれているので、ただただ見ていて楽しいです。
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