パンドラ・セラーズ展
パンドラ・セラーズは、私の植物画制作にかなりの影響を与えた人物です。きっと世界中の多くの作家が彼女に影響を受けたのではないでしょうか。日本でもこれまでに何度か原画が展示されています。シャーリー・シャーウッド博士がボタニカルアートを収集するようになったのも、彼女の作品に出会ったことがきっかけだそうです。まさに現代植物画の発展に多大な貢献をした人物です。
改めてパンドラ・セラーズの原画を拝見し衝撃を受けました。多彩な作品が増えた現代に見ても、その魅力は少しも色あせません。一般人にはない特殊な能力を持っていたとしか思えないような作家です。
同じ施設内では、日本の木版画である「蘭花譜」の展示と、樹齢1000年以上の巨木を鉛筆で描いたMark Frith の個展:A Legacy of Ancient Orks、それに加えてTreesと言う樹木に関係する作品展が同時に開催されています。どれも全く趣向が異なる内容で、改めてボタニカルアートと呼ばれるカテゴリーの幅広さを感じさせられました。
Trees展には私のタコノキ作品も一点展示されています。これまで他作品と同じ壁面に並べたことがなかったので、客観的に見ることができて勉強になりました。
ヴェラムに乗せられた絵具の透明感と鮮やかさが際立っていましたが、裏を返すと、中身の詰まった果実が半透明に見えてしまってリアリティに欠けるなとも感じました。自然光の下ではそこまで透けたような見え方はしないのですが、紙よりも照明の影響を受けやすいことを実感しました。
隣には黒を主体にした版画が展示されており、お互いの作品にないものを補い合っていて、意外なところで相性の合う面白い組み合わせだと感じました。
しかしながら、作品の画面数カ所に何かで引っ掻かれたような切り傷、表皮の剥がれ、顔料の剥離を見つけました。また湿度管理の不備か、長時間にわたる至近距離からのスポットライトの照射のせいか、ヴェラムがサポートの木製パネルから浮き上がって歪みが生じていました。どちらも以前はなかった不具合です。
我が子のように思って制作し、手放すのにも大変な葛藤があったので、まさかこのような状態で再会することになるとは衝撃を隠せません…。
もうすぐ展示期間も終了するので、できれば作品を修復したいと考えています。このまま放置すれば、年月が経つにつれてより歪みが広がっていくでしょう。傷に関してはともかく、ヴェラムの歪みは作者側にも責任があります。私の作品はつい3年前に制作したばかりなのに、同じ会場の約40年前に描かれたローリー・マキューインのヴェラム作品には全く歪みが見られませんでした。原因を明らかにし、今後の制作の糧にしたいと思います。
ヴェラムの扱いの難しさを痛感させられる出来事でした。
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