ヴェラムへのペン画

ヴェラムにペン画を制作し、紙との描き心地の差を検討しました。制作行程と併せて記載しています。




まずモチーフとなるツチグリという菌類を大まかにデッサンし、本画とは別の紙に下図を作成します。

白黒では陰影が作品のイメージを決める重要なポイントになるため、ドラマチックさを演出できる逆光に設定しています。


次に下図をトレーシングペーパーに写します。写す際には、ざっくりとしていたデッサンの線を整理し、レイアウトや気に入らない部位なども微調整します。モチーフの特徴的な星形が活きるよう、先程の下図を変更しました。


本画に転写します。トレーシングペーパーの裏から輪郭を鉛筆でなぞり、転写に用いています。この行程でも、できるだけ線を整理していきます。


ペンとインクで描き始めます。ニッコーの丸ペンとロットリングの黒インクを使用しました。輪郭は線で、陰影は点で表します。本来は黒インクをそのまま利用するべきだと思いますが、ヴェラムは紙よりもインクの明暗が強く表れる印象を持ったため、インクを水で薄めました。水を足したせいもあり、紙に描く場合よりも点描の径が大きくなりがちです。点の形も定まり辛く、コントロールが難しいです。コピックやロットリングペンのような、描き心地が安定しているペンの方がヴェラムと相性が良いのかもしれません。



失敗した部分、濃くなり過ぎた部分、ハイライト、細い線などはカッターで削り落とします。完全に地色に戻すことはできませんが、紙よりも修正がききます。紙ではインクが染み込むのに対して、ヴェラムだと表面に載っている状態だからでしょうか。その反面でインクが吸い込まれないため、ペンが軽く触れただけではインクが乗らないこともありました。ペン先を押し付けると、想像以上に径の大きいドットになってしまいます。点描を重ねるに従ってわずかにインクが盛り上がって見えます。


今回は小さな作品だったので机の上に平置きして制作しました。大きな作品の場合はイーゼルに立てかける事になりますが、ペンを垂直にしないとなると、インクが安定して出てくるのか不安があります。


総合的に見ると、紙にペン画を描く場合には修正は難しいが、使用感が安定しており、明暗の階調を計画的に表現しやすいと感じます。それに対して、ヴェラムにペン画を描く場合、明暗の階調を表現するにはコツが必要だが、多少なら修正がきく点がメリットだと感じました。

ヴェラムの方が明暗が強く表れて力強い印象を与えられますが、細密描写や階調の変化を表すにはコントロールが難しいです。実際のところ、今回制作した作品はペン画としては黒過ぎだと感じます。


Plants on Vellum

ヴェラムに描かれた植物画 ー作品調査と実験制作ー

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